第23回デジコンサロン
デジタル・コンテンツの変遷と未来展望


1998年4月21日 第23回「デジコン・サロン」

- 「デジタル・コンテンツの変遷と未来展望」  -

今回のデジコンサロンでは株式会社ボイジャー代表取締役の萩野正昭さんに「デジタル・コンテンツの変遷と未来展望」をテーマに「電子出版というものがどういう考えに基づいて生きてきたか、その中でボイジャーはいかに闘ってきたか、そして何をつかんできたか」をお話ししていただきました。

萩野さんは、映画、レーザーディスク、CD-ROM、インターネットとマルチメディア草創期から一貫してコンテンツの世界で活躍され、1992年株式会社ボイジャーを創立し、数々のCD-ROMの名作の出版や電子出版ソフト「エキスパンドブック」の開発、最近ではインターネット上のオンライン販売店「ディーボ」をオープンし、新しい流通システムの構築にも挑戦されるなど日本の電子出版の先導者としての役割を担っていらっしゃいます。

■講師プロフィール

萩野 正昭(はぎの まさあき)

1946年9月13日東京麹町生まれ。

1969年早稲田大学第一法学部卒。

1970年~1981年

東映株式会社教育映画部演出。『日本の音楽・琵琶』教育映画祭文部大臣賞、
『バングラデシュの大地に』芸術祭大賞、キネマ旬報ベストワン。

1981年~1992年

パイオニアLDC株式会社製作部。『ファーブルの世界』『SFXミュージアム』
『映像の先駆者シリーズ』等のプロデューサー、MSXゲーム開発を担当、
インタラクティブ・レーザーディスク開発責任者。

1990年取締役映画制作部長、『ターミネーター2』『氷の微笑』『ツインピークス』
『ポンヌフの恋人』などを担当。

1992年株式会社ボイジャー代表取締役。

マルチメディアタイトル製作者連盟理事、東京大学社会情報研究所講師(非常勤)
季刊「本とコンピュータ」編集同人。

■急展開する97年からの電子出版

92年にボイジャーを設立し、エキスパンドブック「新潮文庫の100冊」に代表される「電子本」の普及を根底に、映像ではなく「文字」にこだわり続け、「電子出版」という新分野を自分たちのコントロール下でできるメディアを仕立てようと挑み続けて来ました。しかし、映像を主体とするマルチメディアはもとより、紙の出版界からも冷遇され、昨今は世界的なCD-ROM低迷の影響をも受ける状況下にありました。

ところが昨年、返本率の上昇など「本が売れない」という出版界の深刻な状況を背景に、多様化しなければならない出版ビジネスが俄に電子化へと転換する兆しを見せ、97年は「電子出版」にとって一大転換期を迎えました。最近ではCD-ROMを添付する小説が書店に並び、好評な平凡社の「世界大百科事典」など、これからがボイジャーにとって本領を発揮できる新たな時代が期待できそうです。

■「本」が直面する問題と「電子化」への意義

70年~90年にかけて出版される本の数は倍に膨れ、書店に配本されない書籍が非常に多くなりました。単行本はサイクルが短く雑誌化の傾向にあり、3ヶ月くらいしか棚におかれない場合が少なくありません。そのため、お客様から「本がない」と告げられることが書店での悩みの一つだそうです。一方出版社側では、「厚い本」「難しい本」「専門的な本」「アマチュア的な本」といった出版されにくい書籍があり「本が出せない」という問題を抱えています。その解決策として「電子出版」が注目されてきました。

■メディア経験から見た「本」の原点

近年CD-ROMに人気がないのは、大容量の意味合いをよく理解していなかったことに原因の一つがあると思っています。とにかく内容を盛り込もうとしすぎたということです。作る側があまりに近視眼的に作ること、詰め込むことに汲々としていました。私たちも「本を作る」ことばかりに熱中していたために、「文字を使って読む」読者の側にたった電子本のあり方ということを疎かにしていたのではないかと反省も持ちました。

また「本」を電子化するということは、単にテクノロジーとして捉えるべきではありません。出す必要を感じる側の問題意識が重要です。文化として500年の歴史に基づいた「本」の形式のシンプルさと、<作る→使う→読む>という一連の流れ「本と読者」の関係性を常に根底におき、本来の「本」の在り方に則した「電子本」の開発に一念をおいています。

■「T-Time」6月に発売—遊び感覚のブックブラウザ

インターネットのテキストは世界中どこにいても手軽にダウンロードでき見ることが可能です。しかし、実際にそのテキストを「読む」とすると、その方法は極く限られた方法しかありません。この「T-Time」では、プレーンテキスト・HTMLなどのテキストデータを、瞬時に自分にとって快適な「読む」環境に整えることができます。字体、サイズ、縦書き、横書き、画面サイズ、段組などを自由に好きなように読者が決めることができます。読者が遊び感覚で読みこなすことができるツール、とも言えるでしょう。

また、コストがかかり「本」が出版できないのならば、最低限デジタル化し、校正を行い出版社に提案してゆく方法があります。これまでの出版やオーサリングにかける時間・お金・人を考えると、この「T-Time」は比較的コストのかからないアプリケーションと言えます。HTML文書と「T-Time」を組み合わせることにより、簡便にCD-ROM化が可能です。(販売予定価格 ¥3,500)

<特徴:本のメタファに則しモニタ上の利点を活用>

・エキスパンドブックが1000Kに対して、300K位でとても軽快。

・マルチウインドウ対応で、画面の大きさはフルスクリーンまで自在に変化。

・ページ割りされスクロールがない—ワープロ/WEBブラウザとの根本的な相違 

  (ページ単位に「本」の感覚でめくって読むことができる。)

・縦組・横組の表示も自由自在、画像の入った段組も瞬時にかわる。

  (WEBブラウザでは、日本語は横書きのみ。)

・読みやすい文字サイズや背景のデザインができ、デフォルトとして保存可能。

  (文字とのバランスや色調はレタッチソフトを使うことなく手軽に変更可能。)

・QuickTimeのサポートするあらゆるグラフィックファイルをインライン表示。

  (写真・グラフィックなどドロップするだけで表示。)

・簡単な編集機能、語句検索、ルビ付け、自動栞、付箋など便利な機能付き。

・単なるテキストかHTMLを自動判別。

  (THMLをダウンロードする際に、常に「T-Time」で読むことが可能。)

■パブリックライブラリー「青空文庫」

「青空文庫」はインターネット上の電子の図書館です。

著作者の没後50年を経て著作権が消滅した作品と、著作権者が公開に同意した作品が収録されています。入力・校正などの編集はボランティアで構成されている画期的なスタイルで、日々タイトルが更新され、週に10万件ほどアクセスがあります。
こうした電子テキストのコンテンツがインターネット上に無数に展開されていく傾向がはっきりしています。これをそのままバリバリ読んでいくかいかないかで、大きな力の差が現れていくことでしょう。

若者の本離れなんていっているのは商売の観点であって、一国の将来を考えたらそんな甘いことは言ってはいられないでしょう。でも外国製の現状のブラウザで、ネット上の長文を読めというのは無理があるでしょう。

■関連サイト

株式会社ボイジャー (http://www.voyager.co.jp

オンライン販売店「ディーボ」 (http://www.divo.co.jp

主催:ニッポン放送 F.I.R.E.事務局

協賛:株式会社アクシス